住み手と一緒に住まいを創る – 井上久実インタビュー

Kiohde Hayai Kiohde Hayai
枚方の家, 井上久実設計室 井上久実設計室 Casas de madera
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今回は建築家の方へのインタビューを紹介します。お話をうかがったのは、井上久実設計室の井上さんです。井上さんは、住宅、店舗、事務所など様々な建物の設計を手がけています。今回のインタビューで焦点に当てたのは、日々の暮らしの拠点となる住まいについて。井上さんにとって、住宅を建てること、その背景にある考え、今後のヴィジョンとは何かを語っていただきました。

Q. 建築に興味を持ったきっかけを教えてください。 

子供のころ、料理や服作り、そして日曜大工など、とにかく手を動かしてモノを作るのが大好きでした。大学時代に進路を迷っていた頃、非常勤講師で教えに来られていた建築家の出江寛氏からプランニングの手法を教えていただき、初めて楽しいと感じました。卒業後、大手ゼネコン設計部に就職して比較的大きな建築の設計に携わりましたが、もっとクライアントと深く関わりたいという気持ちになり独立を決意しました。

Q. 家づくりで心がけていることはなんですか? 

住まい手と一緒に創ることです。建築家の独りよがりでは無く、恐らく一生そこに暮らすであろう住まい手と対話しながら創る住まいが真の住まいであると信じています。住まい手、土地の形状や大きさ、その地域の街並みによって住まいは変わります。毎回、異なった条件で住まい作りにチャレンジすることは私に取ってもやり甲斐があります。


Q. 例えば、手がけたどの家にそういった考えが表れていますか?

桜守の家」は公園から見る眺望を優先した住まいです。その公園は地域の人々が憩う場です。公園の景観や公園越しの六甲山の風景を邪魔しない建築であるために、通常は北側斜線に当たらないよう南側を高くするのですが、この住まいは公園に向かって南側を可能な限り下げ、建物のボリュームを最小限にしました。全て住まい手の理解によるものです。


Q. 他にも、そういった家はありますか?

富田林の家」のクライアントは、 この既存建屋の家具や照明器具、庭の石や植栽を新しい住まいに活かしたいとの要望から、住まい手とモノのそれぞれに居場所を与えることをテーマにしました。大きな屋根の下に、真ん中にリビングダイニングを、その周りに4.5畳単位の個室を方位や視線を考慮して配しました。個室同士をアルコーブ状の小さなスペースで繋げ、新旧の家具の居場所としました。真ん中の新旧の調度と家族の居場所、アルコーブ、個室、それぞれの居場所の繋がり様が、プライバシーの粗密を生み出します。古い生垣や再配置された大きな庭石と新築された建屋の対比は記憶と未来を繋ぎ、懐かしさと新たしさが入り混じる心地よい住まいとなりました。



Q. 何か施主さんとの特別なストーリーはありますか? その事例を教えてください。

枚方の家」ではクライアントとの素敵な再会がありました。クライアントのTさんご夫婦とは、10年ほど前に私の設計した住宅の見学会に来られたのが最初の出会いでした。自宅を建てる土地が見つかるまで、私の設計した家が出来る度に見にこられ、勉強されていました。それから数年経ち、希望の土地が見つからないとのことで自宅の建設を断念、マンションを購入されました。 Tさん宅の設計をさせていただくことは諦めていましたが、数年後に住宅を作ることを諦められないので、ご主人の実家に戻り 、その敷地内に自宅を建ててほしいとの連絡がありました。Tさんの住宅への強い思いが感じられ、感動しました。 敷地は生まれ育った枚方の市街を見下ろす高台に位置します。思い出のあるこの土地の風景に溶け込む住まい、家族、地域の人と共に過ごし、ここにある風景をみんなが共有できる住まいを提案しました。



Q. 今後どのような家を建てていきたいですか?

最近は新しい工法や材料が増え、省エネ等の基準も変わりつつある中で、そこにしかない住まいを創るために、色んなことにチャレンジしたいですね。

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